大田区extreme person | 逸脱と研鑽の公案

大田区extreme person

※Mixi 06年8月16日分日記の補遺として書いたものを、移載しました。


さっき、「アホ」と書いて、
西の用法だなぁ、と少し思い、
隣の席の仲間と雑談していて、思い出した。

私は、東京の根はもともと文京区界隈にあったのだが、
会社に入って、大田区蒲田に友達とルームシェアして住んだ。

それは、私の会社は田町で、奴のそれが横浜で、
真ん中を採っただけなのだが、
住んでみて、いろーんなカルチャーショックを受け、
結果、なんて活力のヴァイヴに溢れているのだろう、
と感心し、
以来、大田区には畏敬の念を持ち、一目置いている。

たとえば、終電間際になると、
横浜方面への客引きだろう、白タクの方々が、
なんと改札の向こう側に列をなして、
競りのように、「横浜3000円」とか叫んでいること。

たとえば、ヴァイヴが似ているのか、
中国/韓国はもとより、
ベトナムやパキスタン、インドやカンボジアなどの、
各地からの方々のコミュニティがあり、
結果、かなーりオリジンに近い雰囲気で、
各国の料理を食べられるお店があること。

たとえば、家に帰る途中の商店街には、
安藤昇のような渋い初老の人が、
トレンチコートの襟を立てて、何する訳でもなく、
ひとりぼんやりタバコをすいながら立っている事。



そうして、最初の「アホ」の話。

改札の傍で、いつもどの時間でも同じ場所で、
お酒を飲みかわしている方々がいたのだが、
ある日の白昼、通勤のため改札へ向かっていると、
ホールにその方のうちのひとりが仁王立ちとなり、

「大阪のアホー、東京のバカー」

とずっと叫んでいた。

何事も、真実や本質は、
統計で平均化されない、極端な行動をする人を観察することで、
豊かに看取されうるが、
それを地でいく経験でした。

「確かにその通り。」という、
これ以上ない、強いメッセージを発していた。
おそるべし。
あんなに叫べるなんて。


ついでに別のエピソードを思い出したので付け足す。

大森駅近隣に家を買った年の年末、確定申告をした。

はじめて税務署に行き、
ものすごく対応慣れした職員の方々のお世話になったのだが、
当然、税金というシビアな国民義務に関する事であり、
extremeなリアクションをする方は現れる。

広いホールは机が並べられ、整然と職員の方々により、
われわれ納税者はテキパキ処理されていく。

ちょっとした待ち時間に、ふと全体を見渡すと、
どうも奥の方に、不自然な間仕切りがあり、その向こうでは、
何かしら異議を問われた方が、闘っている様子。

どうも、本人性の確認をIDでする必要が生じたが、
ご本人は提示を渋られている感じだった。

しばらーくして、ホールに怒号が響き渡った。

「俺は俺だ!!」

こんなにはっきりと、
アイデンティティを宣言することは、なかなかないし、
人がそうする場面に遭遇することも稀だ。

これまた、強い真実の言明だった。
アイデンティティって、大事ですね。


今は大田区のはじっこに住んでいるが、
空港や競馬場/競艇場、工場地帯から田園調布まで、
おそろしく守備範囲も広く、生命力も強いこの区には、
まだまだアツいエピソードがたくさんあるに違いない。

私自身の思い出はまだ大量にあるのだが、
それはまた、別の機会に呑みながらでも。

きっと私は、その時までにも、
より多くのエピソードに出逢い、
さらに大田区へ、人間への、畏敬の念を深めているはずだ。