タブラ ラサ | 逸脱と研鑽の公案

タブラ ラサ

うんうんうなり、快と精進を求めて、手元にきた仕事を、
できるだけよい形で世の中へ渡そうと、続けてきたら、

徐々に役割や責任や期待の比重が変わり、
そして、後進を励ます役割も生まれてきて、
先日、全く素の新人の指導係を拝命した。

ここのところ、副業へのエクステンションも多かったが、
本業のエクステンションもなかなかである。

まだ1日も接していないが、
少し自分が入りたての頃を思い出したりした。

弊社は、人以外の機関を特に持たず生産している業態なので、
研修にはわりと労を割いている。

そして私が入ったときは、いろいろ世の中が変化を始めたときでもあり、
ことさら、生産部門への配属者に対しては、
新しい研修の枠組みを設定していて、
結果、入ってから、全体研修を1ヶ月、
そして、生産部門での研修を3ヶ月、
と、若葉マークにとってみれば、
いったい生産しに入ってきたのか、研修しに入ってきたのか、
皆目見当のつかない、長い120日間を過ごしたのである。

普通、長い研修、といえば、
たとえばSE教育とか、たとえば工場研修とか、そんな実的なものを
想像されるだろうが、
我々何せ、アイディアを売り物にする仕事なので、
いろんな課題を毎週与えられ、週末、ヤクザみたいな役員連にプレゼンする、
という、いうなれば度胸の鍛錬のようなものを、続けたものである。

その結果、配属される前に、すっかり、
普通の3年分くらいの、辛口批評や敗北感や挫折、時々の栄光、を経験していたため、
入ってすぐに指導係から、「あれ、何年目だっけ?」と訊かれたりしていた。

野暮も揉まれて粋になる、
それに類する経験のとっかかりを、もうすでに進めていたのだった。

だから、別にまわりに育成の順序などを悩ませなくても、
雑草として根ははり始めていたから、あとは種の生命力に任せて、
生えるに任せればよかったような、そんな感じだったかと振り返って思う。

そう自分で思っていても、実際は違ったのだろうな。

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さて、私の隣にきた彼女は、
湘南の大学で、院を出て、2ヶ月の研修を経て、おいでになった。
この職種を希望されていたようである。

最近はもはや、女性の生産力は男性を軽く凌駕しているように思えていて、
それが現前しないのは、生産力を現実化する仕組みの方がうまくいっていないからです。

何倍もの競争を経て入り、何十倍もの競争を経て配属されたのですから、
種の生命力は確かなのでしょう。

これからは、白い新しい世界に、どんどん芽をのばし葉を茂らせ、
花を咲かせたり新しい種を生んだり、と、
彼女なりに育っていくのでしょうね。

すこし、その白さがまぶしく思えて、
私が陽の光を遮ったり、大地の養分を余計に吸い取ったり、雨風を吹き廻したり、
そんな、白を灰色にしてしまわないよう、
よくよく幹を太く育っていくよう、
祈り始めました。

ひとが命を思うとき、やはり、祈る以外の善策はないように思うのです。